金融機関でもブラックの落とし穴

過労死・ブラック企業多事総論

過労死・ブラック企業の口コミ・経験談・アドバイス0017ブラック企業ということばから真っ先に連想される業界と言えば、IT、流通、飲食あたりでしょうか。
しかし土日祝がかっちり休みの金融機関にも、ブラック企業は存在します。私がかつて在籍していた某地方銀行も、そのひとつでした。大体、銀行という組織自体が、他の業界から一種隔離されたような会社であることも、その原因のひとつだと思います。れっきとした株式会社なのに、自分の会社のことを「弊社」と呼ばず「弊行」なんて呼ぶことも、特別意識の現れな気がして、今ではどうも耳に障ります。
さておき、そのブラックさを手始めに上げるとすれば、陰湿な人事システムでしょうか。
私のいた銀行は典型的なお気に入り人事で、ドラマでよく見る「ゴマすり上手の押し付け上手」が上へ行くような、部下にしてみれば何の希望も持てないような評価制度でした。新卒で入って間もない頃の私から見ても、どうしてこの人が支店長なんだろう?と首をかしげることもしばしば。何しろ、その人は自社で扱っている金融商品の名称も、正しく覚えていないような人でした。一方で、度々遠く離れた支店への異動人事が出る人も。肉体的な負担と、異動による経済的な負担を負わせる、絵に描いたような肩叩き辞令で、回覧が回るたびにこれでは辞令というより「辞めろという命令」だと同情したものでした。その上層部の御用聞き人事部からも、私の在職中に過労死が出ていました。亡くなる前日、いつものように床について翌朝冷たくなっていたという話ですから、世間で騒がれる典型的なパターンです。聞いた話によれば、その社員は毎日5時に起きて遠方の自宅から本社へ出勤、帰宅は11時というような生活を繰り返していたそうです。その時、私は間接的な、そして組織的な殺人とはこんなにぞっとするものかと身震いしました。
また過労死まで行かなくとも、営業部門では上司のパワハラでうつを患い、辞めていく若手があとを立ちませんでした。私は3年弱勤めましたが、その間にやはりうつになった時期があり、辞めた時には既に辞表を提出していた同期数人と祝杯を挙げたものでした。
人事部ですらそんなありさまですから、もちろん正確な残業手当なんてつきません。あまりなくても怪しまれるからと、給与明細に表記された一ヶ月の残業手当は4~5時間分。毎日定時の1時間前出勤、定時後2時間は残務整理に追われていた上での話です。定時が過ぎてから、お客様へのアポイントを強制する営業体制と真っ向から矛盾していて、もう笑うしかありませんでした。全員営業というスローガンで、事務部門の社員も営業を強いられているのですから、営業成績を伸ばしてもインセンティブというものはありません。モチベーションの源がもはや行方不明の状態です。他店の同期の中には、「自主的に出たことにしてくれ」とサービスで休日出勤させられた社員もいました。ちなみに、そうして消化しきれなかった有給の消化は、退職する時には原則消化させてもらえません。私はなんとか一部をもぎとりましたが、なんでもそういう「文化」なのだそうです。そういう慣行は文化ではなく、ただの因習だと思うのですが……。
長年かけて凝り固まった、このような因習にインパクトを与えられるのは、やはり労基への告発です。告発した後輩のおかげで、労基の監査を目の当たりにした立場から言えば、根本的なレベルとまでは行かなくとも、摘発に対する警戒は格段に上がります。ひとつの支店に入れば、他の支店も監査の目が及ぶかもしれない、そう会社側に思わせることが大事なのだと思います。実際、監視カメラの映像を一度押収されてからは、定時を1分でも過ぎると更衣室に追い立てられるようになり、出勤時間もぎりぎりにしてくれという指示が出ました。
ただそれでも、摘発を受けた会社側には違法労働が犯罪である、という意識は薄いままでしょう。今まで異常な労働条件で働いてきた・働かせてきた組織には、異常こそが正常なのです。お上の口出しがあったからとりあえず外面を整える、程度でまた元に戻ってしまう企業が大半ではないでしょうか。現場の人間にとってなにより難しいことだと経験してはいますが、一人一人が「自分の労働力を安売りしない」「自分の責任のみを負う」という強固な信条を持つことが最初の一歩だと思います。「自分がいなければ回らないから徹夜をしてでも終わらせる」なんて、美談でもなんでもない、率直に言えば馬鹿な話です。なぜ自分がいなければ回らないのか?それは自分の力が及ばないからではありません。タスクに対して必要な人員を配置できない経営側の落ち度です。残酷ですが、もしその人が突然死んだとしても、会社は痛くも痒くもありません。異常な業務量を間違った責任感で正当化して、自分の心を守ろうとすることだけはやめてほしいと、私は願っています。
ブラック企業にいる全ての方々へ、最後に一言。
「毎日辛い思いをして命を削るだけの価値が、あなたの会社にありますか?」
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